国民生活白書への違和感

というか、引用されているデータや調査項目への違和感。まだ全体を読んだわけではないのでかなり散漫ですが。


はじめにの6ページ。小見出しに「つながりの希薄化により人間関係が難しくなったと感じている人が多い」とある。

「一般的な人間関係について難しくなったと感じるか」と尋ねたところ、「難しくなったと感 じる」と回答した人の割合は63.9%と6割以上を占めた(第6図)。さらにその理由について尋ね たところ、(中略)家族、地域、職場内におけるつながりに関する項目を挙げる人の割合も高くなっている(第7図)。

人間関係についてたずねているのだから、人間関係(つながり)に関する回答が多くなるのは自然なことではないかと思うのだが、。さらに図を見てみるとこんなことに。

9つの選択肢のうち6つが「つながりの希薄化」に分類されていれば、そりゃ回答率は高くなろう。


第2節39ページ。「2.家庭における教育力の低下」というおなじみの文言。調査結果を示したうえで

上記の結果から、このような家族のつながりの変化が、家庭における教育力を低下させていることが示唆される。

と結論。しかし、使用した調査項目は「昔と比べて親は自分の子どもに対して社会規範やしつけがきちんとできていると思いますか」というもの。「社会規範ができている」という日本語のおかしさはひとまず置いておくとして、この設問で分かるのは回答者の「印象」でしかなく、実際に家庭の教育力がどうなっているか、ということについては何も示してはいない。さらに、「昔」というのは10年前なのか、30年前なのか、50年前なのか、それとも100年前か。その判断は回答者にゆだねられてしまっており、結果としてバラバラな「昔」イメージで回答されている可能性が高い。あいまいな表現を使わない、というのは社会調査における基礎の基礎なのだが。
また、そのあとでしつけができていない理由をたずねているが、これも実態ではなくイメージについての回答となるのは当然のこと。


ついでに、この調査項目は白書では使われていないのだが、「安全・安心に関する特別世論調査」という調査についても同様のことが気になった。PDFの4ページ、「社会の安全や安心にとって懸念されることで、最近、あなたの身近で以前に比べて増えたと感じるも のは何か」という設問。すぐキレる人ぐらいはまだしも、児童虐待とか子どもの連れ去りとかストーカーとかが「身近で」増えている人がこんなにいるものなのだろうか。そもそも「身近で」といいつつ「感じる」という不確かな認知をたずねていることにより、マスメディア等から受ける「印象」を回答してしまっている人も多いのではないかと感じる。マスメディアの培養効果というか。人々の安全、安心「感」を高めたいのであれば、試しに犯罪報道を控えてみたら結構効果があるんじゃないだろうか。