裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求める緊急要請

数日前から何人かの方のブクマリストでタイトルや記事の一部を目にしてはいたのですが、じっくりと目を通してはいませんでした。碧猫さんからトラバをいただき、改めて碧猫さんのエントリやその他何名かの方の記事を読んだところ、自分が思っていた以上にとんでもない事態だということに気がつきました。
強姦致死傷、強盗強姦、強制わいせつ致死傷、集団強姦致死傷事件など、性犯罪の被害者の氏名や事件の概要が、守秘義務を持たない裁判員の「候補者」に知らされるとのこと。もちろんこれは上記以外の事件についても同様なのですが、性犯罪の場合は被害者や女性一般に対する偏見等から二次加害がなされる場合も多く、そのため被害者が被害を訴えにくい状況にあることはもうずっと以前から指摘されてきたことです。それなのに、そのような状況があってもなお声をあげた被害者の氏名が多数の人に知らされ、さらに守秘義務もないとなると、当の被害者にかかる重圧はもちろん、被害者がますます訴えにくくなるという状況を生み出しかねません。というか間違いなくそうなるという気がします。
この問題に関し、アジア女性資料センターが「裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求める緊急要請」を行うとのこと。
申し入れは19日ということで、もう時間はあまりありませんが、1人でも多くの方の目に留まるように下記に転載させていただきます。

裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求める緊急要請にご賛同ください
5月6日付読売新聞九州版で報じられたように、21日に開始される裁判員制度裁判員選任手続きにおいて、性暴力事件被害者の氏名が裁判員候補者に開示されてしまうことが明らかになりました。しかし最高裁はこの問題について対策指針を出していません。
被害者保護の手段を講じることなく制度を開始してしまわないよう、緊急の要請を行うことにしました。21日まで時間がありませんが、できるだけ多くの団体・個人の声を届けたいと思いますので、どうぞご協力をお願いいたします。なお最高裁への申し入れを19日に予定しています。

●賛同するには●
以下のフォームを利用してajwrc.shomei@gmail.comにお送りください。

                                                                      • -

裁判員制度における被害者のプライバシー確保を求める要請
に賛同します。

●団体賛同の方
団体名:
●個人賛同の方
氏名:
肩書き(あれば):

                                                                      • -


要請書
////////////////////////////////////////////////////////////////////////
裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求めます
////////////////////////////////////////////////////////////////////////


最高裁判所長官 竹崎博允 様

 私たちは、性暴力被害者の権利回復の観点から、5月21日より開始される裁判員制度における性暴力犯罪の取り扱い、とりわけ被害者のプライバシー保護について、重大な懸念を抱くものです。

裁判員が参加する刑事裁判が対象とする事件には、性暴力犯罪である強姦致死傷、強盗強姦、強制わいせつ致死傷、集団強姦致死傷が含まれますが、これらは対象事件の2割以上を占めると予想されています。にもかかわらず、報道によれば、性暴力犯罪事件においても、他の事件と同様に、それぞれの事件で100人にも及ぶ裁判員候補者に対し事件の概要と被害者の氏名が知らされるとのことです。

 裁判員候補者が事件の情報を漏洩することは「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の秘密漏示罪の対象とはならず、漏洩を防止する確実な手段は整備されていません。しかし最高裁判所はこの問題に対する対策の指針を出さず、各地方裁判所に解決をゆだねる方針であると報じられています。これでは、地裁によってまちまちな解決策となり、被害者のプライバシー保護が公平に保障されない可能性が否めません。現在刑事裁判において被害者のプライバシーが保障されていることとも大きく矛盾します。

 性暴力犯罪は他の犯罪と異なり、性・ジェンダーに関わる社会的偏見ゆえに、しばしば被害者の側に責任が転嫁されたり、スティグマが付与されてきました。適切な配慮が行われなければ、裁判プロセスそのものが二次被害を及ぼす場となる危険性があります。こうした性暴力犯罪の特殊な性質が考慮されることなく、他の刑事事件と同様の選任手続きが行われれば、被害者に二次被害発生の不安を
呼び起こすだけでなく、二次被害を避けるために、被害にあっても被害届を出さないといった傾向を助長することにもなりかねません。

 一般市民が参加する裁判員制度で性暴力犯罪を取り扱う上では、性・ジェンダー偏見を排除するために十分な配慮を払い、被害者のプライバシーと安全を確保することが必要不可欠です。事件情報の漏洩を確実に防止する措置を講じることなく、拙速に裁判員制度を開始すれば、この制度そのものが、被害者にさらなる加害を招き、性暴力犯罪の訴追と被害者の救済を阻害する原因となりかねません。

被害当事者および支援者との協議のうえ確実な安全保護の措置が講じられるまで、裁判員制度の開始を延期するか、それが困難な場合は、性犯罪に関連する事件について裁判員選任手続きを開始しないよう要請いたします。