「女性活躍」予算が1000億円の増?

先日発表された2015年度予算案についての毎日新聞の記事

安倍政権が成長戦略の柱と位置付ける「女性の活躍推進」について、2015年度予算案の総額は前年度当初比1000億円増の9000億円となった。安倍晋三首相は昨年末の衆院選で、17年度末までに「約40万人分の保育の受け皿を確保する」と約束。待機児童解消に向け、15年度は▽保育所運営のための施設型給付▽保育所の整備・改修▽小規模施設に対する地域型保育給付−−などに7023億円を配分し、新たに約8万人分を確保する。

ニュースを受けて、ウェブ上では「女にばっかり金を使うな」的なコメントもみられる。
だがちょっと待ってほしい。保育所の整備や待機児童の解消は別に母親だけに関係することではない。保育所に預けられないから働けないという女性が多いことは事実だとしても、保育所の恩恵を受けるのは父親だって同じだし、安心して預けられる環境を整えるのは子どもの権利を守るためにも必要だ。それなのに、それを「女性の活躍推進」と表現するのはいかがなものか。そして、9000億円の予算のうち、この保育サービスや学童保育に関する部分が8割近くを占めているのだ。

他の項目だってそうだ。

女性の貧困対策としては、生活困窮者の相談支援や就労支援を行う自立支援に400億円を盛り込んだ。

 さらに働く女性の2人に1人が非正規労働者である現状を踏まえ、正社員への昇格を希望する女性らを支援する「正社員実現加速プロジェクト」として321億円を計上。勤務地・職種を限定して正社員に採用する制度を新たに導入した企業や、非正規から正規への転換を進める企業を助成する「キャリアアップ助成金」の拡充などにあてる。

財務省のサイトでは何が「女性活躍」にあたるのかがわかる資料を見つけられなかったので、厚生労働省の「平成27年度予算概算要求の概要」を確認してみたが、当然のことながら、生活困窮者の自立支援も「正社員実現加速プロジェクト」も「キャリアアップ助成金」も、別に女性だけが対象になっているわけじゃない。女性「も」対象になるというだけの話である。

さて、これだけで約85%。内閣府の「平成27年度予算概算要求の概要」も見てみると、「女性の活躍、少子化対策、暮らしと社会等」の要求額が約1100億円強。うち、「子ども・子育て支援新制度」関連が1000億円超。「男女共同参画社会の実現・共生社会の形成等」の総額は40億円強だが、あげられてる項目の中で直接男女共同参画に関連しそうなものは7億円強。

予算の見方についてよく知らないので間違いもあるかもしれないけれど、「女性活躍」関連予算の大半は保育関連であり、また、性別に関わりなく利用できる制度も多く含まれていることは間違いない。

ところで、予算に関する資料を見て今後が非常に心配になったのが、「男女共同参画社会の実現」が「女性の活躍」の下位項目になってしまっていること。また、厚生労働省の方でも、「女性の活躍推進と少子化対策」の中に妊娠・出産支援や女性の健康が入ってしまっている。そこにはDVやリプロを「人権」の問題として捉える視点はない。「女性活躍推進法」が作られてしまったら、本当に男女共同参画社会基本法は骨抜きにされてしまうかもしれんね。

最後に、内閣府資料の「女性の活躍、少子化対策、暮らしと社会等」のリード文がとても味わい深かったのでご紹介。

少子化対策・子ども若者育成支援施策の総合的な推進をはじめ、男女共同参画社会 の形成、高齢社会対策、障害者施策、交通安全対策、食育、犯罪被害者等施策、自殺対策、子供の貧困対策、アルコール健康障害対策、定住外国人施策の推進等、我が国 の直面する社会的課題の変化に対応し、自立と共助の精神に基づく社会の形成を図る。

このごった煮感。このやっつけ感。文章の体をなしてねーわ。