別のところにつっこんでみる

柳沢氏の「健全」発言について。発言の内容自体に対しもいいたいことがないわけではないが、そっちはおいといて別の方面からつっこんでみようと思います。


柳沢氏は、若者たちの意識について次のように述べます。

柳沢厚労相:子ども2人以上「健全」発言、波紋に拍車(毎日新聞)
他方、当人の若い人たちは結婚をしたい、それから子どもを2人以上持ちたいという極めて健全な状況にいるわけだから、本当にそういう若者の健全な、なんというか希望というものに我々がフィットした政策を出していくことが非常に大事だと思っている。

これに対し、首相もこのように述べています。

厚労相の謝罪「国民は了解を」=安倍首相(時事通信)
首相はまた、柳沢氏が6日の記者会見で子どもを2人以上持つことを「健全」としたことについて、「若い人たちが『日本では結婚したくない』『子供を生みたくない』と思っていたら大変悲しい話だが、そうではないという話をしたと思う」と述べ、問題視しない考えを重ねて示した。

どうやら、「若い人たちは『結婚したい』『子どもを2人以上持ちたい』という「健全な」状況にある」という点では2人の認識は一致しているようです。しかし、この現状認識は政府内で共有されているのでしょうか。
昨年5月に、「家族・地域の絆再生」政務官会議PTという大変気色悪いプロジェクトチームの中間取りまとめが発表されていますが、その報告書にはこのように書かれてあります。

今日の深刻な少子化の原因の一つとして、過度に経済的な豊かさを求め、個人を優先する風潮があると考えられる。家庭生活よりも職業生活を優先させ、個人が自らの自由や気楽さを望むあまり、生命を継承していくことの大切さへの意識が希薄化し、「結婚しない」あるいは「結婚しても子どもを持たない」方が、経済的、時間的な制約に縛られることがより少ないという考え方を背景に、非婚化、晩婚化、少子化が進んでいるという側面は無視し得ないと考えられる。

どうやら、このPTにおいて若者は、生命を継承していくことよりも経済的豊かさ、自由、気楽さを求めており、「結婚なんてしないで自由に生きるもーん」「子どもなんていない方が楽だもーん」という、極めて「不健全な」状況にあると認識されているようです。それは次の文からもうかがえます。

それだからこそ、長期的な観点から少子化問題に対応するためには、強制ではなく、経済優先・個人優先の価値観とは異なる新しい価値観に基づき、「結婚して子どもを産み育てることが当たり前と皆が自然に考える社会」を実現することが必要であると考える。

「『結婚して子どもを産み育てることが当たり前と皆が自然に考える社会』を実現することが必要」あー気色悪いということは、現在はそのような「健全な」社会ではない、結婚して子どもを産み育てたいとは思っていない、という認識のようです。そして報告書ではそのような現状を変えるため、洗脳意識改革を中心とした施策を提言します。このような考え方は、少子化に対応するための政府の施策の総合的な指針である『少子化社会対策大綱』(平成16年6月閣議決定)に基づくものとPTは勝手に主張しているであり、それまでの政府の方針を引き継ぐものであるはずなのですが、柳沢氏、首相の両人においては若者は「結婚したい」「子どもを2人以上持ちたい」とすでに考えているという大変能天気な認識をお持ちのようです。
さてさて、少子化対策という緊要の課題について、限られた予算、時間の中で施策を効果的に進めるためには、少なくとも現状をどう認識するかという点についてはある程度の共通認識が形成されている必要があろうかと思います。しかし、政府内においてさえそのような共通認識が作られていないばかりか、まったく逆方向の認識を持っているとさえいえる状況であり、これは首相の指導力、あるいは任命責任が問われなければならない問題なのではありますまいか。



なんつって。