とんでもない親はいるだろう。でも・・・

この記事はどうか。

都内のある人材紹介会社では、新入社員の親が「残業が長すぎる」と労働基準局に“密告”する騒ぎに発展した。同社の人事部長が言う。
「直属の上司とか人事部をすっ飛ばして、いきなり労働基準局ですから、対応のしようがない。当然、当局の監督指導が入り、急きょ『ノー残業デー』を設けることに。それでもご両親は『残業する体制をやめない限り、裁判も辞さない』と息巻いておられます」

労働基準局に”申告”するのは労働者の権利じゃないんでしょうか。本人以外の家族でも申告できるようだし。だいたい「直属の上司とか人事部に」文句いえば対応したの? どうせ「親が会社まで乗り込んできた」とかいうくせに(と決めつける)。だいたい「監督指導が入」ったというのであれば、実際に労働基準法に照らして問題があると見なされたということじゃないのかしら。
 

富士通人事部出身の作家、城繁幸氏が言う。
モンスターペアレントの特徴は“過剰な消費者意識”です。いつでもどこでもお客さま扱いを求めるため、大学の入学説明会でも『ウチの子を上場企業に就職させられるのか』とか『TOEICを何点にしてくれるんだ』なんて真顔で聞いてくるのは当たり前。そんな親たちは、ついに会社にまで『ウチの子に何をしてくれるんだ』と過剰な期待を抱くようになったわけです」

だとすれば、義務教育にも競争原理を持ち込む、なんてのは今以上にモンスター・ペアレントを生み出すことになるような気がしますが、それはおいといて、こういう指摘↓もされているのに、なんで完全にスルーなんでしょう。

サービス残業が当たり前だったり、事業縮小や移転に伴う転勤以外はないなどと言っておきながら3年おきに転勤させたりと、確かに、突っ込まれても仕方がない余地を残している会社もあります。訴訟沙汰になったら確実に会社の負け。なあなあでやってきた慣習は見直すときでしょう」(城繁幸氏=前出)

しかも直前の文章「会社は学校とは違う。まして社員はお客さまではない。ところが、モンスターペアレントに正論は通じない」と段落が変わってない。突っ込まれても仕方がない余地を残している会社に突っ込むなというのが正論? よく分かりません。

また、札幌市教委の実態調査(2月発表)によると、同市の教員が「精神的な負担を感じる業務」は、「保護者・PTA対応」が60%でダントツだった。次いで「生徒指導」(33%)。問題教師、問題児もいるが、“怪物親”たちが学校を壊している!? 

詳しい調査結果は見つけられなかったけど、この記事↓。

「精神的な負担を感じる業務」では、学級懇談会、保護者との面談や電話連絡、PTA関連活動といった「保護者・PTA対応」が5410人中3227人(59・6%)と突出。個別の面談や進路指導・相談など「生徒指導等(個別)」が1764人(32・6%)、職員会議や管理職との打ち合わせなど「校内での会議、打ち合わせ等」が1177人(21・8%)と続いた。

記事の下の方にあるように、実際に理不尽な親の要求への対応が精神的負担になってるケースもあるでしょう。っていうか、そんなの私が子どもの頃だってあったろうと思います。でも、「保護者・PTA対応」を負担に感じるってのには、これが教員の本来的な業務ではないと思われてるというか、少なくとも数ある業務の中で優先度が低い(にもかかわらず、時間や労力をとられる)ということにもあるんじゃないかと思うんですが。教員に限らず忙しいときに優先度の低い仕事をやらされるのは負担だと思います。これほんとに必要なのか?と思うような会議にが2時間も3時間も続けられたり、そのために資料作りしなけりゃならないとか。記事の中にも「学校行事など学校長の命令に基づく時間外勤務、自主的な時間外業務と持ち帰り業務を合わせた「時間外勤務等」は、教員1人当たり月平均71・7時間に上っていることもわかった」とあるわけですし。
もちろんこれは私の推測でしかなくて、実際に「負担」というのが何を指しているかは分からないわけですが、「怪物親云々」も推測ですよね。しかもあれだ。ここで被害者扱いされている教員や上司が別の記事では「ダメ教員」「パワハラ上司」と叩かれてたりして。


こうやってメディア等で「モンスター・ペアレント」が取り上げられて、「モンスター」のイメージが広められることで、ちょっとした苦情でも「モンスター」と周囲から見なされてしまう気がします。あるいは「モンスター」と見なされることを避けるために、たとえ正論であってもいいたいことを我慢してしまう人だっているかもしれない。ポイズン。会社や学校を掻き回すのはモンスター、先生が鬱になるのはモンスターのせい、モンスター対応のために不必要な業務をやらされている・・・と個別のモンスターを叩くことで、組織とか制度とか構造の問題は看過されていくのだろうなあと思います。