なにが言いたいんだろう

「親と同居」20代後半男性の64%
<世帯動態調査>35〜39歳の4人に1人が親と同居
「親と同居」3分の1 30代前半女性
親と住む30代前半女性急増=「パラサイトシングル」影響?−厚労省調査 -


国立社会保障・人口問題研究所のサイトに掲載されている調査の概要の該当箇所をざっと見てみたけど、これらの記事に出てくる「パラサイトシングル云々…」というコメントは出てこないようだ。マスコミ発表の資料にはそういう文言があったのか、それとも発表を受けて取材したところ、国立社会保障・人口問題研究所がそういうコメントをしたのか、その辺は分からない。
ただ、2番目、3番目の記事を見れば分かる通り、国立社会保障・人口問題研究所の分析ではパラサイトシングルの増加はいくつかあるとみられる要因についての仮説の一つに過ぎないと思われる。けれども、1番目、4番目の記事ではパラサイトシングルの増加だけが原因であるかのような書かれ方だ。特に1番目の朝日新聞の記事では、「パラサイトシングル」の部分については国立社会保障・人口問題研究所の分析として紹介するのではなく、「パラサイトシングル」が増加していることが〜わかった」「その多くが〜「パラサイトシングル」と見られる」と断言してしまっている。
こういう切り取り方自体ももちろんどうかと思うが、そもそもの国立社会保障・人口問題研究所の分析(というかそこにおける言葉の使い方)もどうよ?と思う。「パラサイトシングル」っていうのは山田昌弘の定義では「学卒後もなお、親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者」のことですよ。ところがこの調査で分かるのは「親と同居しているかどうか」ということだけ。それらの人々が生活費や日常の家事を親に依存しているかどうかなんて分からない。ちゃんと給料から生活費を入れている人もいるだろうし、もしかしたら一家の主な稼ぎ手となっている人だっているかもしれない。もしくは親の年金等で生活しているけど日常の家事をすべて担当していたり、親の介護をしている人だっているだろう。そもそも親と同居するためには地理的な条件(実家の近くで就職するとか)が必要なわけで、地元校への進学・就職とか、Uターン就職とかが増えてるのかもしれない。それは経済的条件もあるかもしれないし(30代前半といえばちょうどバブル崩壊後の就職組だ)、親の老後が心配とかいう動機だってあるかもしれない。
いろんな可能性があるにもかかわらず、「親と同居=(あるいは≒)パラサイトシングル」という、しばしばマイナスの意味をもたされた言葉を使用して分析、報道する効果について、マスコミや公的機関はもっと敏感になるべきではないの?というか、若い世代を叩きたくてあえて使ってるのか?