新聞の表と裏

つっても新聞の闇を暴く!とかじゃなくって、たまたま今日の朝日新聞(福岡版)の31面および32面にこんな記事が載ってたって文字通りの意味です。


まず、子どもみたいにテレビ欄の方から順番に読んでいくと、32面に「(ニッポンみんなで)シブトク立ち直って 小沢昭一さんエール」てな記事が。ネットでは読めないようですが、量があるので一部のみ転載。

敗戦後は日本中が「茫然自失」の状態でした。昨日までの価値観が根底からひっくり返って、ただ「茫然」とするだけじゃなく、自分の存在の根拠さえ失った「自失」だったわけです。(略)
当時は「みんなで頑張ろう」なんてかけ声もなかった。(略)それまでの「一億一心」から、正反対の「てんでんバラバラ」。この「てんでん」というのは、個人一人ひとりの「自立」なんです。そのてんでんを深めよう、バラバラを深めようと、急に切り替わった。でも、バラバラの価値観をどう深めていくか。それは大変でも、そのために戦争という大きな犠牲を払ったわけですからね。
戦後はみんなが何もかも失って貧しかった。でもその代わり「自由」なるものを味わって、これにすがりつこうと思い、みんなが希望を持った。
だから今回、「一致協力」とか、「絆」なんてことが強調されるのが実はちょっと心配なんであります。いつかまた、あの忌まわしい「一億一心」への逆戻りの道になりゃしないかと、そんな気がするんですね。だから私たちの世代には「絆」ってのはちょっと怖い言葉なんです。耳にタコで、こりごりしてる」でも若い人たちにははじめての新鮮な言葉なんでしょう。いつの間にか意味がすり替わらないように、気をつけなくちゃいけませんよ。

そしてそのちょうど裏側の福岡版紙面には、23日、姜尚中さんが福岡女学院で行った講演会の記事が。見出しは「『絆、被災地を支える』姜さん講演」。

3月下旬、福島県相馬市に取材に入った姜氏は「戦争でこういう状態になるのかというくらいひどい状態でした」と被災地の様子を語った。
姜氏によると、震災までは人と人との絆が劣化していると思われていた。震災後は「自分が同じ立場になるかもしれなかった」という思いが日本中に広がり、助け合いによって失われていた共同体が生まれつつある。やがて、目の前のつらい現実を受け止めなければならなくなったとき、被災地の人々を支えるのは絆だと話した。

小沢さんのインタビュー記事に比べ、姜さんの方は講演を記者が短くまとめたものだから記事通りに受け取るのは注意が必要だとは思いますが、話の趣旨が合ってると仮定して。個人的には小沢さんに共感するなあ。もちろんあちこちの店の募金箱に普段見ないようなお金が入っていたりするし、それぞれでなにかしらの支援活動等をしてる人もいるんだけど、基本的には震災前とほぼ変わらない生活を送らせてもらってる九州に住んでいるものとしては、3.11で日本が変わった的な話は正直実感が無い。一方で、いろんなところで「東北」「東日本」ではなく「日本」が強調されることに対する違和感はすごく感じていたりするのだぁ。