「男(はこう考える)脳」「女(はこれだから…)脳」

 『話を聞かない男、地図が読めない女』という本が数年前にベストセラーになって以来、「女性は方向感覚が弱い」と信じている人は少なくない。女性の脳は男性の脳に比べ、空間認識能力が低いという説が、その背景にあるようだ。
 本当にそうなのか。ディスカバリーチャンネルの人気番組「怪しい伝説」が、このテーマに取り組んだ。男女10人ずつの被験者に地図を渡し、車の助手席で道案内をさせてみたのだ。
(略)
 そして、男女10人ずつの得点を総合した結果、女性は平均77点、男性は74点とほぼ互角。減点の内容も男女で違いはなかった。
 男女の脳に生来の差があるのは事実だが、その後の訓練や習慣で脳の構造や処理能力は変化するというのが、最近の科学界の定説。2011年にアメリカの研究チームが発表した論文によると、空間認識能力の優劣は、性別より教育や環境の影響が大きいらしい。
 というわけで、「地図が読めない女」という説はどうやら科学的には怪しいようだ。何ごとも訓練あるのみ?

まあ、経験的にも「そりゃあそうでしょう」と思えることではあるのですが、このような成果はなるべく広く知られてほしい気持ちはありますな。なぜなら、ここ数ヶ月のうちに、「超」をつけてもいいぐらいの大企業の社員が受けた研修の中で「男性脳、女性脳」について言及された、という話を複数聞いたから。

少し前に「男性脳、女性脳」が流行った?ときにはあまりのトンデモっぽさに完全スルーしていたのだけれど、改めて検索してみると、思った以上にひどかった。
例えば、Googleで「男性脳」と検索してみてトップに表示されたサイトのリードにはこう書かれてあります。

男性と女性では脳の構造が違います。あなたの脳は男脳ですか?女脳ですか?

男性と女性で脳の構造が違うっつうんだったら、男は男脳、女は女脳だろうよ。たったこれだけの文字数の文章がいきなり矛盾しているのにおかしいと思わない脳は何脳ですか? あと、薬指が人差し指より長いと男性脳とか言うのもあるらしいよ! ヒャハー、俺様男性脳だー(棒)。

ところが、調べてみるとこの「男性脳、女性脳」が企業向けの研修でけっこう使用されているらしい。しかも有料の講座がけっこうある! ↓これなんかたった6回の講座で30万円もするのに、そのうちの1回がまるまる「男性脳、女性脳」!

これだけの金払ってそんな話されたら俺様、脳内でちゃぶ台ひっくり返すわ。

そしてこの↓コンサルタントの方?もなんだかな。

ある女性管理職のプレゼンを聞いていて、実に残念な気持ちになりました。
「あぁ〜、その話し方では、バカにされるだけでしょう・・・。 それでは経営幹部から相手にしてもらえないよ〜」

しかし、この書類を見た相手(経営幹部・管理職)は、全員例外なくこう思うことでしょう。 
「やっぱり、女子社員はしょせん女の子。おバカだなぁ〜」と。

しかし、彼女が真剣に話をすればするほど、その場の聞き手は全員、ウンザリした目で彼女を見ています。
「あぁ〜、着眼点は良かったのに、それじゃぁダメだよ〜。 せっかくの活動提案なのに、男性たちの耳には、ヒステリックな女性の不平不満・グチにしか聞こえないよー」

彼女達(注:一流企業等で高い役職に就いている女性たち)は、女性の感覚・感情を大切にする「女性らしい女性」でありながらも、仕事をする場面では、完全に「男らしい発想と振舞いかた」がスキルとして身についているのです。
それゆえ、社内で、男性ばかりの組織でも、摩擦を生まない。
それゆえ、男性幹部や男性上司から、女性を理由に問題視されない。
それゆえ、伝統的な大企業でも、男性優位の組織でも、上手くやっていけるのです。

なんつーか、申し訳ないけど「女は男の気に入るように振る舞え」という風にしか読めないです、私には。まあ処世術としてはそれはそれでありなのかもしれません(それが見えない天井を「打ち破る」こととは思えないですけど)が、それを「脳」によって説明したり、必要以上に女性のプレゼンを貶めたりする意味が分かりません。だって、感情的だったり、まとまらなかったり、必要以上に攻撃的だったり、プレゼンの下手な男性なんていくらでも見てきてますもの。それに、プレゼン下手な男がいてもそれは個人の能力・資質とみなされるのに、女がプレゼン下手だと「だから女は」っていわれがちなのは何でかってことを考えるべきではないですかね。


しかし、この手の研修における「男性脳、女性脳」がしばしば「ダイバーシティ」という言葉とともに登場するのはなんかのギャグか。ていうかギャグだと言ってください、お願いします。