第4次男女共同参画計画公聴会に行ってきた

全国6箇所で開催され、福岡が最後。「定員に満たないので当日受付もOK」とのことだったが、最終的に席はほぼ埋まってた感じ。

最初に計画策定専門調査会会長の鹿嶋敬氏が15分ほどで概要を説明。第4次の答申案では「目指すべき社会」像に第3次で盛り込まれた「固定的性別役割分担意識をなくした男女平等の社会」が無くなっているのだが、過去5回の公聴会でこれに対する意見がたくさん出たのか、第4次の目指す社会像?に新たに入った「男女が自らの意思に基づき」という文言の中に固定的性別役割分担意識をなくすことも含まれている、という趣旨の説明をしていたが、ちょっと苦しくないか。

その後、会場からの意見聴取に移ると次から次に手が挙がる。出た意見としては「女性(活躍)に特化されすぎている」「第3次に比べて後退した」「固定的性別役割分担意識をなくすという表現はやはり入れてほしい」「男性中心型労働慣行の変革を打ち出しているが、現在政府が進めていること(残業代ゼロ法、派遣法改正)はまったく逆行していないか」「非正規雇用の処遇問題、同一価値労働同一賃金の実現を進めるべき」「『世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行』という文言がなくなったのは大きな後退」「健康分野が妊娠・出産に特化されすぎ」「貧困と健康の問題が盛り込まれていない」「女子差別撤廃条約を批准したのだから遵守するのは当たり前、勧告への対応を」などなど。

公聴会に参加するのは初めてだったので、過去の公聴会ではどんな感じかわからないけれども、今回はアンチからの発言はなし。ただ、婚学(R)関係の人(とその場で自己紹介したわけではないけれど、知ってる人なので)がすごく婚学(R)目線&ジェンダーバイアスかかりまくりのの発言をして会場をザワ…めかせたぐらいか。

委員の人たちは、女性活躍に予算がつき始めているこの気運に乗って男女共同参画を推し進めることが重要というようなことを言ってたけれども、ジェンダー、差別、平等、人権、多様性といった視点を欠いたまま女性活躍に乗ってしまうのは、非常に危険というか男女共同参画を歪める結果にしかならないと思う。実際、数年前から福岡県が実施する「いきいき塾」って女性リーダー養成講座は、かなりの予算を使い遠方から講師を呼んで基本クローズドの講義を実施するなどしているが、その報告書を見る感じでは受講生がジェンダーの視点を講座を通して身につけているとはとても思えない(そもそもジェンダーや差別、暴力に関する講義がほとんどない)。むしろ「女性ならでは」とかにガンガン行ってしまいそうな危うさを感じる。

というわけで、意見募集の締め切りは14日(月)なので、ラストスパートで意見送ります。このエントリを読んでくださったみなさまも是非お願いいたします。

日本よがりな「女性活躍」?

8月末に開催されるThe World Assembly for Women in Tokyoの概要が外務省HPに掲載されていた。直訳すれば「女性のための世界会議・東京」てな感じかなと思うが、日本語での名称は「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」ですって。

「そういえば『女性活躍』ってどう英訳するのかな」と思って英語ページを見てみたら、「日本及び世界における女性の活躍促進のための取組について議論を行います」の部分は「we are expecting to have lively discussions on various women's issues」と訳されており、「活躍促進のための取り組み」はまるっと消えている感じである。考えてみれば「活躍する」だけでは具体的にどんな活動をするのか全く分からず、英語には馴染まない表現なのかもしれない。ちなみに2年前に開催された若者・女性活躍推進フォーラムの資料では、「活躍」は「Active Participation」と訳されているようだが、これも何へのparticipationなのか不明である。そして今回は、この具体性のない「活躍」がさらに抽象的な「A Society where Women Shine」という表現で置き換えられているようだ。
そしてシンポジウムのタイムテーブルを見ると、「トイレを通じた女性のエンパワーメントの実現」が分科会の一つとして立ち上がっているという安定のトイレ推し!

ところで今回のシンポジウムは、以前のエントリで触れた「IMPACT10×10×10 HeForShe」の安部ちゃんの声明でも言及されているのだが、この声明がもうある意味感心するほど薄っぺらいので、長くなるけど他国の首脳のものも含めてざっと訳してみたので見比べていただきたい(日本語訳には間違いがあるかもしれません。また他国の首脳の声明は一部省略しているものもあります)。



◯日本国首相

Creation of “a society in which all women shine” is one of the foremost elements of my administration’s policies. I am determined to contribute to the international community on this matter through hosting the World Assembly for Women in Tokyo in 2014 and 2015, and strengthening cooperation with international community.

「すべての女性が輝く社会」の創造は、我が政権における政策の主要な要素の一つです。私は、女性のための世界会議・東京(注:上述した通り、日本での名称は「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」)2014、2015を主催することを通し、この件に関して国際社会に貢献するとともに、国際社会との連携を強めていきます。

「平等」も「差別」もシンポジウム開催以外の具体的な取り組みもないよ!


◯フィンランド大統領

Gender equality benefits all of us. It is a human rights issue, as well as a prerequisite for sustainable development. It is for the benefit of the whole society when the full potential of both women and men is put to use. For more than a century, gender equality has been a core value for Finland.
I call upon all men around the world to work – together with women – to build equal and sustainable societies.

ジェンダー平等は我々皆のためになるものです。それは持続可能な発展のためだけでなく、人権問題なのです。女性と男性の潜在能力をフルに活用することは社会全体の利益となります。1世紀以上にわたり、ジェンダー平等はフィンランドの基本理念でした。
私は世界中のすべての男性にー女性とともにー平等で持続可能な社会の形成に取り組むことを呼びかけます。

◯アイスランド首相

We firmly believe that all people are created equal.
Equality is not just a human right, it is essential to progress and prosperity. Without it we cannot claim success in our endeavors as human beings. No society can claim to be completely developed or matured without equality for men and women. Equality should be equally important for everyone regardless of gender.

我々はすべての人は平等につくられたと堅く信じています。
平等は人権であるだけではなく、進歩と繁栄にとっても欠くことのできないものです。平等なしでは我々は人類の努力が成功したと主張することはできません。どんな社会も男女の平等なしに完全に発展・成熟したとはいえません。平等はジェンダーに関わりなくすべての人に平等に重要であるべきなのです。

◯インドネシア大統領

Women represent half of the drivers and beneficiaries of development. Therefore, the issue of gender is mainstreamed in my mission as President. It also contains specific commitments for women and girls, namely do “promote the role and representation of women in politic and development” and “protect women, children, and other marginalized groups” I strongly believe that this is a smart strategy to help remove the root causes of discrimination and violence against women and girls.

女性は開発の推進者と受益者の半分を占めています。そのため、ジェンダーの問題は私の大統領としての使命の中心をなしています。そしてそれは「政治や開発における女性の参画を推進する」「女性や子ども、その他の周縁化された人々を守る」といった女性と少女のためのコミットメントを含むものですが、私はこれが女性や少女に対する差別と暴力を根絶するための懸命な戦略だと信じています。


◯マラウイ大統領

I believe that gender equality, ending violence against women and girls, and the empowerment of women are key to sustainable social, political and economic development for my country.

ジェンダー平等、女性と少女への暴力の根絶、そして女性のエンパワーメントは、我が国の持続可能な社会的、政治的、経済的発展の鍵であると信じています。


◯ルーマニア大統領

Gender equality is the only chance for the progress of humanity. Don’t close your eyes to discrimination! We all must say STOP and give women equal opportunities in life. I commit myself firstly at national level to fully act towards achieving gender equality!

ジェンダー平等は人類の進歩のための唯一のチャンスです。差別に目を閉ざさないでください! 我々は皆「STOP」と声を上げ、女性に人生の平等な機会を与えなければなりません。私はまず国レベルでジェンダー平等に向けて取り組むことを約束します!


◯ルワンダ大統領

Women and men are equal in terms of ability and dignity, and they should also be equal in terms of opportunity.
I urge all men and boys to join me as HeForShe Champions in support of our women and girls, so that together, we can continue working to achieve gender equality.

女性と男性は、能力と尊厳において平等であり、また機会においても平等であるべきです。
私はすべての男性と少年に対し、女性と少女を支援するHeForShe Championsとして行動をともにし、ジェンダー平等を実現するために取り組み続けるよう呼びかけます。


◯スウェーデン首相

It is time for more men to step forward and get involved in moving efforts for gender equality forward. I therefore want to urge all men to join in and take their share of responsibility – at work, in their home life and among their friends. All of us who live in Sweden shape our country together. Together we can create a gender-equal society.

ジェンダー平等を前進させるため、より多くの男性が一歩を踏み出すときです。そのため、職場で、家庭生活で、または友人たちの中で、すべての男性が参画し責任を分かちあうことを促します。スウェーデンに住む皆がこの国をともにつくっているように、我々はジェンダー平等な社会をつくることができるはずです。

橋本聖子の子育て観

twitter等で話題になっていた、自民党参議院議員中川雅治公式ホームページに掲載されている橋本聖子、義家弘介との鼎談「日本再生とは教育再生のことです」がハフィントンポストでも取り上げられていた。

4ページにわたって掲載されている発言録の3ページ目の中川氏の発言が問題になっている。例えばこんな風である。

同級生を脱がして、皆でお腹やおちんちんに赤いマジックで落書きしたりしました。やられた方は怒っていましたが、回りはこれをいじめだと思っていませんでしたね。今なら完全ないじめになり、ノイローゼになったりするケースもあるのかなあと思います。いじめられている方も弱くなっているという側面はありませんか。

6年前(2009年)のものであるとはいえ、トップページからリンクが貼られていることから、本人の認識は現在も変わっていないのであろう。こんないじめた側の視点でしか語れない人物が現役の議員であり、教育について偉そうに語っているのだから恐ろしいことだ(とはいえ、HPの「私の主張」の中に教育に関する項目はほぼ皆無だし、国会での議事録を見ても教育に関する質問はほとんどなく、特に教育問題への関心が高いとは思えないのだが)。

ところで、なにげなくクリックした4ページ目の橋本聖子の子育てに関する発言もひどいものだった。

中川 究極の少子化対策はありませんか。これぞ決定版といったような。

橋本 正直実現にハードルは高いですが、それに近いものは考えられます。
例えばゼロ歳児はすごく手がかかります。ゼロ歳児の面倒を見るのは雇用も全て考えると、1年間でいくらお金がかかるのか。大体1人二百数十万円かかります。それだったら、その分お母さんにあげた方がずっと良いのではないでしょうか。
極端な話かもしれませんが、「3歳になるまでお母さんが必ず育てて下さい」という政策の方が私は確実に効果がでると思います。「その間仕事しなくてもちゃんと補償してあげますよ。その代わり我が子を一生懸命に育てて、子どもにいろいろなことを伝えて下さい」とします。きっと日本は根底から変わると思いますよ。もっと産みたいと考えるでしょう。

基本的には山谷えり子や下村博文と同じ考え方だが、山谷は0歳児保育につき50〜60万円かかる、下村は(極端な話)年700万円かかると発言しているので、額にはかなりの開きがある。3年間毎年700万円保証してくれるなら子育てに専念してもいいと思う人はいるだろうが、年200数十万円で3年間キャリアを中断しようという人はどれほどいるだろうか。しかも「3歳になるまで」ということであれば、第2子、第3子を持てばそれだけキャリアの中断期間は長くなる。その間の雇用契約はどうなるのか。また、専業主婦はどうするのか、フルタイムとパートの間で差は設けるのか。「実現にハードルが高い」と発言していることから現実的な案だとは思っておらず、そのため細部については考えていないのかもしれないが、それならば「確実に効果が出る」などと軽々しくいうのもやめてほしいわ。

しかも、山谷、下村両氏と同じく、ここでも対象とされているのは(働かずに子育てに専念しろと言われているのは)母親のみである。私が最初に就職した時の上司は出産でパートナーを亡くしたシングルファザーであったが、そのような人たちのことは考えているのだろうか。

この一番大切な3年間、半分以上のお母さん達が子どもと一緒にいないというのは、親にとっても損失です。せっかく母親になれたのに、母親としての仕事ができないということは、人間にとって将来にとって不幸だと思います。

保育園に預けて仕事をしているからといって、子育ての(母親としての、とはあえて言わない)仕事が0になるわけではないことぐらい、実際に子育てを経験したのであれば分かりそうなものだが。

橋本聖子2020年東京オリンピックパラリンピック組織委員会理事も務めているとのことであるが、女性アスリートの妊娠・出産・子育てと競技との両立がようやく日本でも話題になり始めた昨今、「母親は3年間子育てに専念しろ!」なんてのは日本のスポーツ界においてもマイナスでしかないと思うわけで、適性を疑うレベルなんだが。

もちろんこれらの発言は6年前のものではあるが、2009年っていったらすでに国が「ワーク・ライフ・バランス」とか「男性の働き方の見直し」とかいい出して数年経ってる頃だからね!

小学校の懇談で

特に下の子(現在2年生)のクラスの懇談に参加していて、非常に違和感があること。
1年生の時からなんだけど、先生の話が一通り終わって「じゃあ保護者の方からも一言ずつ」という流れになった時に、「うちの子は女の子なのに乱暴で…」「うちの子も女の子なのにがさつで…」「うちの子も『男なの?』って思うくらいに片づけをしなくって…」「うちの子は男の子なのにインドア派で…」みたいに、「女の子なのに」「男の子なのに」ってつける人が結構多い。枕詞かってぐらい。もちろん、一人が発することで、それに乗っかってる人もいるんだと思うけど。
でもさ、たかだか30人前後のクラスにこれだけがさつだったり乱暴だったり片付けをしない女の子がいるってことは、「女の子=乱暴じゃない/がさつじゃない/片付けをする」って前提の方が間違っていると考えた方がいいんじゃないかしらん。

ニュースとしてゼロ

安保関連法案が強行採決されたこの日、NHK国会中継しなかったとはいえ、夕方から夜のニュース番組ではそれなりにトップニュースとして取り上げられていたわけですが…。
日テレのニュースZEROはトップニュースとして「猛暑・台風」について約7分、その後、安保関連法案の採決が約6分。しかも、他局が「強行採決」というワードを使用しているのに対し、ZEROでは「可決」「採決」との表現のみで、「強行採決」は使われていませんでした。
重大事案が起きている時にアニメや通販番組を放送しているといつも話題になるテレ東でさえ「強行採決」を使用していましたよ。

内閣府男女共同参画局サイトあれこれ

内閣府男女共同参画局のサイトについて。
今年第4次計画の策定が行われるので、計画策定専門調査会の議事録を時々読みに行くのだが、3月の会議の議事録がなかなかアップされないなーと思っていたら、ようやく最近になってアップされた模様。と思ったら立て続けに6月の会議の議事録もアップされていたようだ。
でも、トップページの「新着情報」には記載されないのね。議事録のアップについては以前から掲載されていないようなのだが、こういう情報こそトップページで知らせて欲しい気もするんだけどな。ちなみに議事録を見ると、高橋史郎がリプロの項目について「胎児の生命権」や「家族の絆の大切さ」とのバランスを取れだのとしきりに言っていて、鹿嶋敬に「高橋委員はリプロを敵視し過ぎませんか」とまで言われる始末。主観ではあるが、議事録を読む感じでは他の委員から「めんどくさっ」な雰囲気を感じるし、高橋史郎の意見がそのまま反映されるとは思えないものの、はたしてどんな計画案が出てくるか。

それと、トップページ右側にあった「輝く女性応援会議オフィシャルブログ(旧タイトル「SHINE!」)」のバナーがいつの間にか消えていた。最後まで(つってもブログ自体はまだ生きているが。1ヶ月近く更新はされていない模様)意味の分からない企画であった。

あと、男女共同参画局Facebookに7/6付けで「UN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)は、女性のエンパワーメントを応援するためのイニシアティブ「IMPACT10×10×10」に参加する10人の首脳の一人に安倍総理大臣が選ばれたと発表しました」との内容が掲載されているのだが、女性のエンパワーメントを「応援」と、この他人事感が漂う表現はなんだ。また、「このキャンペーンは女性活躍を戦略的に推進する世界の10政府、10企業、10大学の長が選ばれるものです」と記載されているが、「女性活躍」なんて表現使ってる?
「IMPACT10×10×10 HeForShe」のサイトで使用されている表現は「gender equality」(ジェンダー平等)である。また、HeForSheのサイトの"The HeForShe Commitment"には、 「And I commit to taking action against gender discrimination and violence in order to build a more just and equal world.」(「私はより公正で平等な世界をつくるためにジェンダーに基づく差別と暴力に対抗する行動を起こすことを誓う」)と記載されていいるのだが、現政権の辞書に「差別」とか「平等」とか「公正」とかいう言葉はあるのかね。ていうか、「IMPACT 10X10X10」のHEAD OF STATE IMPACT CHAMPIONSのそれぞれの声明を見ると、安倍ちゃんのが異彩を放ちすぎて恥ずかしい感じだよ!

はなちゃんのみそ汁について

はなちゃんのみそ汁の話が道徳の教材に掲載されるとのことで、twitter等で言及されているようである。
私は本も読んでいないし24時間テレビのドラマも見ておらず、新聞等の記事やネットでの情報で概略を知っているだけなので内容についてはとりあえず置いておく。
が、料理サークルや保育園等の食育イベントや時折開かれている「はなちゃんのみそ汁を味わう会」というイベントではなちゃんが数十人分のみそ汁を作ってふるまうらしいという話を聞くと、さすがにモヤっとした気持ちになってしまう。そろそろ親との距離を取りたくなるような年頃じゃないのかなとも思うし、ちゃんと子どもらしい時間が過ごせているのかなとちょっと心配になるな…。